お父さんのお弁当
それは夏のことでした。40歳代のYさんの奥様が、わずか1年余りの闘病で稀な癌で去られて、高校生と小学生の3人のお子さんが遺されました。
Yさんは体重100㎏以上でラグビーをする100年続く会社の役員です。順風だった40代で突然訪れた困難でした。
夜1時に子供たちを寝かせて布団に入っても眠れません。朝5時半に起きて3人の子供たちの朝ごはんとお弁当をYさんが作ります。子供たちの学校のお世話もです。料理は好きな方だったのですが朝起きられない日もあり昼間眠くなります。睡眠導入剤を飲むようになりました。
しかしYさんは、変化した環境に前向きでした。コロナ禍になり、毎晩あった会食がなくなると、早く帰り夕食もYさんが作ります。家ではお酒は飲まなくなりました。家族中がオンラインで在宅になり、いつも一緒にいます。
「子供たちがよろこぶんですよ」
コロナ禍ではジムにも行かなくなり子供たちも運動ができません。家でマシーンを使ったり、トイプードルを飼い娘さんと毎朝30分犬の散歩を始めました。
2年経ち、子供たちが大学生になりお弁当は一つに減り、通学や通勤が始まりました。Yさんは、新しくゴルフを始めました。面白くなり練習場に行き週末はゴルフ場です。ジムも再開して筋トレで汗をかきます。
食事はずっとお弁当と朝食夕食はYさんが作ります。朝はご飯とお味噌汁と発酵食品。昼に糖質が多かったら夕食は減らして冬は鍋。奥様の料理を思い出して作られているのでしょうか。完璧です。
Yさんは10か月で10㎏痩せ、体脂肪は8%減りました。生活習慣病の血液検査は正常範囲になりました。
「妻も僕も関西出身でお墓はあちらなんですが。妻はまだ家にいるんです。妻が、僕と一緒にっていうので」
「ずっと5時半起きだったのは、子供たちが7時に家をでるんでお弁当早く作って冷ましておくためです。その方がいたまなくて美味しいだろうって」
お母さんの味をかわって伝え続けているお父さんのお弁当と食事。Yさんの健康とお子さんたちの幸せをきっと運んでくれると信じてやみません。