助けられて

ひとり娘のKさんはご夫婦で91歳のお母様と実家に同居です。庭いじりや夜のおしゃべりが楽しみでした。近所には幼馴染や親戚。同級生がいる保育園が職場でした。
そんな穏かな日々、お母様に物忘れがでました。同時に腸の病気で入院をして認知症が進みました。そのまま帰れず、コロナ禍になり、会えなくなり、1年もたたずに亡くなったのです。

お母様はKさんのことが分からない日もありましたが、最後に会ったときは「忘れないよ」と言ってくれました。でも、Kさんは、家でみてあげればよかったと寂しさから抜け出せません。

そして突然のこと。御主人が会社で倒れて救急車で運ばれ意識が戻らないままになりました。コロナ禍で救急車が来るのに40分かかったそうです。妻のKさんでも面会はできない日が続きます。

「保育園で子供と居られる間だけは忘れて。それが無いと何も手につかない」
若い頃高度の肥満だったKさんは、生活習慣病になり減量していましたが、また太り始めました。ついコンビニのスイーツを買ってしまいます。
寝付けない。途中で何度も目が覚める。睡眠薬をのんでも効きません。

唯一、意識が無くてもご主人に週に1回スマホ面会できるひとときが、Kさんの支えでした。「聞こえてないかも」「見えてないかも」でも「ふっくらしてきて安心しました」

ふと気づくと、亡くなったお母様が育てていた、庭の紫陽花や薔薇が咲いていました。Kさんは、花の手入れをするようになりました。近くの川のほとりを高台まで歩くと富士山が見えます。「考えてもしょうがないことは考えない」と言い聞かせて歩くようにしました。

Kさんはさらに動脈硬化に良いものを調べてトマト、玉ねぎ、煮干し粉、黒ゴマ、きな粉、サケ缶を混ぜて冷凍。一食分ずつお湯でスープにします。白米は昼食だけ。毎日6000歩も。効果はでました。ひと月に1㎏ずつ減量し続け、血圧、脂質、血糖は安定。

御主人は、コロナ禍のなか昨年夏、帰らぬ人となりました。「最期は、2年ぶりに、直接会えました」「触らないでくださいって」

「子供たちの元気な声に、周りの親戚や友だちに、すごく助けられています」それは、亡きお母様とご主人がずっと一緒にいてくれているのだと私には思えます。
画:風 市丸節子1982