そのころ
日本医師会雑誌の巻頭座談会に出た際、掲載された写真、20年前の私です。今から約20㎏太っていました。
ほぼ毎日、夜間に病院から電話がかかります。その後病院に向かいます。週の半分はそうでした。終電に間に合った日も始発までにまた病院に呼ばれて行ったものでした。休暇はなく年末年始も病院にいました。
いつも頭の中は患者さんのことでいっぱいでした。
睡眠が2-3時間で、運動をしない、深夜にラーメン、ピザ、焼肉など高カロリー食を食べます。悪循環で太っていくばかりです。血圧がいつも170/100以上でも放っていました。
そのうちに眠れなくなりました。薬をのむと電話で目が覚めないので、眠くなるまでお腹いっぱい食べるようにしていました。ある深夜、呼ばれて病院に着いたら看護師さんに「先生!頭にメロンパンがくっついてますよ」と言われました。
また、家でシャワーを浴びていた時、病院からの電話に気づかず、その15分間が重要な事態になりました。以来、シャワーでもトイレでも病院からの電話を聞き逃さないように離さず持っていました。
今思います。そんな働き方で心身が続くはずがありませんでした。周囲の人に迷惑をかけるようになりました。自分ではわかりませんでした。
そんなとき、看護師さんが昨日の患者さんの話を始めました。私はその昨日の患者さんを全く思い出せません。彼女の顔や声が遠くにぼやけていき、動く口元だけを見ていました。「先生、聞いてますか?聞こえてますか?」
私は仕事を休みました。20年前は、ストレスチェックや過労死などの問題はまだ話題にもなっていません。私はただ自分を責めました。
休んで、健康に気をつけるようになった頃の私です。痩せました。
毎日、本郷から池袋まで歩きました。食事は規則正しく和食中心に野菜を多く、とずっと心がけています。
希望を持って生きてよかったと、そしてそのころも幸せだった、と今は想います。