棄てる

Tさんは富士さんの見える海も豊かな故郷に65歳までいました。山々を重い器械を担いで歩きます。山林に道路ができるとき、車の入らない山道を先に正確に測量するのです。20年間山林を歩き続けたTさんは、腰を傷めた脚の痛み以外は、若々しくお元気でした。

奥様を50代で亡くしていたので、3年前に息子さんに呼ばれて東京にやってきてすぐに、早期のがんがみつかりました。そのころから、眠れなくなりました。仕事もしなくなり家にいます。

初めてお会いしたときは総合病院で生活習慣病の薬を何種ももらっていました。
そしてコロナ禍になりました。

3か月間家から出ませんでした。体重が増えて、だるい、浮腫む、風邪が治らない。朝起きて何もやりたくないなあ、と、体調がもどりません。

食事を変えました。故郷の時から料理は毎日作っていましたが、コロナ禍で一時冷凍のお弁当にしていたのです。塩は一日10g以下。野菜をいっぱい。お米は夕食は食べない。
でも、無理はしません。野菜はスーパーの冷凍野菜、ブロッコリーが好き。とても便利です。国産野菜もあります。蛋白質は高カロリーは食べません。豚や鶏ささみ肉とお豆腐。納豆は朝晩。そしてキャベツのサラダを欠かしません。

人混みを避けて、毎日散歩をしました。
「腰が痛くても我慢して歩く。使わないと筋肉が減るのを知ってるから」
買い物を二日に一回。遠回りして1-2時間歩きました。

10か月で8㎏減量、その後1年半ずっと維持しておられます。血液検査は全て正常になりました。

秘訣は、東京一人老後を楽しむ、こと。見晴らしのいい部屋に引っ越しました。20歳からオーデオが好きでレコード何千枚持ってました。今も毎日、ジャズの古いCDをご自分のスマホに入れご自分のオーデオに飛ばして聴く、という達人です。月に何回か行くジャズライブが楽しみで、新しい友人もできました。

「引っ越すとき、要るもの以外全部棄てて来ました。今を楽しんでます」

病気とつきあって前を向いて努力をされるTさんのお姿に、健康長寿でいるための大切なものを教えられました。