木の芽

「木の芽」は「山椒」の若い時に、枝から柔らかい赤ちゃんの葉を選んだもの。なぜ、芽というのでしょう。初夏になると実ができそれが山椒の実です。強い葉たちは擦って粉状にして真夏の鰻にかけますね。

亡き母が夕食を作っているとき私に、山椒の葉っぱを何枚ちぎってきて、と言います。家の庭先にある山椒の木は低くて幼い私の手が届くのです。私は一番みどり色の綺麗な葉を選びます。母は手のひらで、パンと叩いて、すると爽やかな香りがあたり一面に立ち込めて魔法のようでした。

初夏になると、山椒の実を集めて九州の甘いお醤油で煮ます。常備菜。母は亡くなる前日にもそれを、おいしい、と頂いたそうです。

今はこれらをお店で買いますが、清々しい香りがすると、私にあの頃を運んできてくれます。