母が帰る時間に 忘れられない患者さん

母が帰る時間に

1980年台、欧米のお洒落な音楽や映画がラジオで流れ始めました。思春期のYさんは英語の歌詞を暗記しました。映画は何度も見て、セリフを覚えます。そうして念願の大好きな英語を使う仕事につけました。書類や論文の翻訳を30年以上続けています。Yさんは仕事が楽しくて帰宅は夜の10時頃。夕食は同居のお母様が作っ…
ちりめんじゃこ 身体にいい食事は

ちりめんじゃこ

九州の漁師町で育ったので、朝獲れの青魚、特にイワシを朝食や昼食によくいただきました。干したイワシは保存食で、美味しさも栄養もぎっちり詰まっています。 イワシの稚魚を干したのを関東では「しらす」と呼びます。一夜干しや釜揚げだったり。関西ではさらに強く干して「ちりめん」と呼びます。九州はもっと強く干して…
願いごと 忘れられない患者さん

願いごと

Sさんのお父さんは三陸の港町であわびやウニを採っていました。家では料理の得意な父の妹がシュークリームやホールケーキを何十個も作り、習って小学生の時から自分でお菓子を作っていました。つまりカロリーの高い美味しい食べ物がいつもあり、お腹いっぱい食べていたのです。 気が付いたら肥満でした。100㎏を超えま…
早春の文旦 身体にいい食事は

早春の文旦

文旦は、ブンタン、ボンタンともザボンとも呼びます。育った町では、厚めの皮を砂糖煮にした「ザボン漬け」がお店に並んでいました。ですのに正直、大人になるまであまり果実を口にしたことがありませんでした。 なぜでしょうか。生産量が少ないのです。九州四国だけで作られ、旬の時期だけ。よく似た有名な外国産グレープ…
助けられて 忘れられない患者さん

助けられて

ひとり娘のKさんはご夫婦で91歳のお母様と実家に同居です。庭いじりや夜のおしゃべりが楽しみでした。近所には幼馴染や親戚。同級生がいる保育園が職場でした。そんな穏かな日々、お母様に物忘れがでました。同時に腸の病気で入院をして認知症が進みました。そのまま帰れず、コロナ禍になり、会えなくなり、1年もたたず…
最近のランチ 身体にいい食事は

最近のランチ

おにぎりが好きです。ついきれいな三角にぎゅーっとしていました。ユーチューブのおにぎらずを調べて、なんでもあり、と思いつきました。 海苔の真ん中にお米を拡げ上に具を乗せ、またお米をのせて、海苔を四方からふわっと包みます。具は好物の鯖の焼いたもの。さつま揚げ、スーパーのアジフライ。残り物のきんぴらや炒め…
どんなときも 健康診断・人間ドック

どんなときも

N子さんは都心の役所で福祉士の資格を活かしてバリバリ深夜まで働いていました。もともとお酒が強い家系。仕事も飲み会も男の人に引けを取りません。家族の料理も手を抜きません。ロールモデルのような働く女性です。定年を目前に、落ち込んだ時期も乗り越え、無事働き終えてほっとしていました。 そんなとき、肝臓と蛋白…
木の芽 身体にいい食事は

木の芽

「木の芽」は「山椒」の若い時に、枝から柔らかい赤ちゃんの葉を選んだもの。なぜ、芽というのでしょう。初夏になると実ができそれが山椒の実です。強い葉たちは擦って粉状にして真夏の鰻にかけますね。 亡き母が夕食を作っているとき私に、山椒の葉っぱを何枚ちぎってきて、と言います。家の庭先にある山椒の木は低くて幼…
棄てる 忘れられない患者さん

棄てる

Tさんは富士さんの見える海も豊かな故郷に65歳までいました。山々を重い器械を担いで歩きます。山林に道路ができるとき、車の入らない山道を先に正確に測量するのです。20年間山林を歩き続けたTさんは、腰を傷めた脚の痛み以外は、若々しくお元気でした。 奥様を50代で亡くしていたので、3年前に息子さんに呼ばれ…
蕪 身体にいい食事は

冬になると、暖房の中でも生野菜は寒くて、サラダが遠のきます。毎日お鍋も、面倒です。常備菜として蕪を浅漬けにします。立派な葉は別にして全部使います。約1%の塩を振って保冷パックで冷蔵庫に。しんなりしてだしが入りやすくなりもっちり系に。昆布の千切り、鰹節、ゆずの千切り、味付けにお醤油とオリゴ糖を少々。こ…