糖尿病とは
- 糖尿病を患っている方が、気が付かない要因には、初期の段階では自覚症状がほとんど現れません。そのため、健康診断で血糖値の高さや尿糖を指摘されても、必要な治療を受けずに放置されている方も少なくないようです。発症しても自覚症状がなく、そのために受診や治療を中断してしまう方もおられます。
- しかし、症状が感じられなくても高血糖の状態が続くため、高血糖による酸化ストレスがインスリンの分泌を低下させ、また細胞でのインスリンの働きを悪くさせ、高血糖になりという悪循環になります。こうして全身の血管から臓器に悪影響を及ぼし、臓器合併症が起こります。臓器合併症を起こさないようにすることが大切で、代表的なものを説明します。
糖尿病の主な合併症について
網膜症
早い状態で起きていると分かっているのが、目の網膜にある細い血管の詰まりや瘤や出血です。治療が適切に行われないと視力が低下したり、失明する危険もあります。
腎症
血液を濾過してくれる腎臓内の毛細血管が徐々に痛んでいき、血液に含まれる老廃物と必要な栄養素をきちんとふるいにかけることが出来なくなります。これによって腎不全などを引き起こし、週に3回程度、専門の医療機関で人工透析を受けるようになります。
神経症
神経に栄養を送り届ける毛細血管の流れが悪くなり、神経障害が出現します。手や足の感覚神経がわからなくなり、指先が痺れたり、痛みを感じにくくなるのです。進行すると、運動神経にも障害が現れ、筋肉に力が入りにくくなったり、顔面神経の麻痺などが生じます。このような末梢神経障害が起こると、怪我ややけどの際に気が付かず、ついには壊疽を起こすことになりますが現在はこのように重症化する方はごく少ないです。
このような症状の方はご相談を
- 健康診断などで「血糖値が高い」と指摘された
- 喉がよく渇く、水をよく飲む
- 尿の回数が増えた、尿のにおいが気になる
- 体重が急激に増加、または減少した
- 最近、疲れやすくなった
- 満腹感が得られない(いくらでも食べられる)
- 手足がしびれる
- 足がむくむ
- 皮膚が乾燥して痒い、皮膚に出来物ができやすくなった
- やけどや怪我をしても、あまり痛みを感じない
- 切り傷やその他の皮膚の傷が治りにくい
- 視力が落ちてきた、目がかすむ
- 意識が混濁することがある
- など
糖尿病の種類
- 糖尿病には幾つかの種類がありますが、多くを占めるのが2型糖尿病です。膵臓で作られるインスリンが十分に分泌されなくなるインスリン分泌障害のタイプと、うまく働けなくなって過剰に分泌されるインスリン抵抗性のタイプと、これらの中間型があります。現代は食生活の欧米化などを背景として、10代、20代で発症することも珍しくなくなりました。
- 2型以外では、インスリンの産生量が極端に減少している1型糖尿病の方もおられます。小児期に発症することが多いと言われていますが、青年期に入ってから糖尿病の症状に気づき、医療機関を受診して1型糖尿病と診断されることもあります。この他、妊娠をきっかけとして血糖値が高くなる妊娠糖尿病、インスリン作用に関わる遺伝子の異常、がんなどの疾患が原因となるタイプの糖尿病もあります。
糖尿病の診断
- 糖尿病の診断にあたっては、血糖{空腹時血糖126mg/dL以上 随時血糖200mg/dL以上、75g経口糖負荷2時間値200mg/dL以上}とHbA1c{6.5%以上(NGSP)6.1%以上(JDS)}の検査を行って確認します。2012年の診断基準(改訂版)からは、1回の検査で症状や主にこの二つの検査値で診断をする基準ができています。これは早期診断をできるように考えられました。さらに、家族歴、体重歴、自覚症状、身体症状、診察所見、なども参考にして総合的に判断いたします。繰り返しになりますが大切なことは、初期段階では自覚症状が殆どありませんので、血糖値とHbA1cの値を定期的に測定していく必要があります。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)とは
- 血液中のブドウ糖は赤血球中のヘモグロビンと結びつくので、血糖値が高くなるにつれて上昇します。血中のHbA1cを測定すると、最近の血糖値の状態を把握することが出来るのです。ヘモグロビンの寿命は4か月程度なので、HbA1cの値は過去1~2か月における血糖の平均的な状態を示すと推定されています。
- HbA1cは糖尿病の進行度を把握する上で最も大切な指標となっており、慢性期の状態をつかむことができ、合併症の状態を推測する助けになります。治療の目標にするときには、それぞれの年齢、症状、発症期間、合併症の状態などによって異なりますので、一緒に考えていきます。
糖尿病の治療
- 糖尿病が発現してしまうと、厳密な医学的意味でもとどおりに治すことは困難になります。しかし、血糖値を正常に保ち、生活習慣を見直すことによって糖尿病の合併症になることを防ぐことが可能であり、症状を軽減して維持することが大切です。
血糖値を継続して検査を行いながら、その方の適正範囲に保っていくために、食事や運動を保持して薬物療法を行い、日常生活が自分らしく過ごせるように一緒に考えます。