脂質異常症とは
- 脂質異常症は血液に含まれる脂質が異常値を示す病気です。2012年の日本動脈硬化学会の診断基準では、LDLコレステロール値(いわゆる悪玉コレステロール)が140㎎/dl以上、HDLコレステロール値(善玉コレステロール)が40㎎/dl未満、中性脂肪が150㎎/dl以上となっています。この値のいずれかが適正値から逸脱した状態が脂質異常症です。また、LDLコレステロール値が120~139㎎/dlの場合を境界域高コレステロール血症と呼び、高血圧や糖尿病、肥満の状態も総合的にみて、治療の必要性が判断されます。
脂質異常症の種類
脂質異常症の数値に該当する人は非常に多いと言われています。男女ともに脂質異常症の方は沢山いますが、特に女性の方に閉経前後の40歳を過ぎたあたりから徐々に増加していき、70歳代で最も多くなります。
遺伝性
家族性高コレステロール血症、家族性複合性高脂血症の方は割と多くおられますが、動脈硬化が進む病気ですので、はやめに診断して適切な治療を考えます。
続発性
- 全体の40%を占めるといわれ、特に肥満、糖尿病、薬剤性、肝臓・胆道系などの病気によって出現することが多いです。なかでも、アルコールによるまたは肥満による脂肪肝の方が多いようです。
- WHO分類で分けられているものでは、Ⅱa型、Ⅱb型、Ⅳ型が多く、これらは共通して、続発性では総カロリー、糖、脂質、アルコール類の過剰摂取によってそれぞれが引き起こされていますので、食事による誘発因子が大きいと考えられます。
- これら脂質異常症だけの数値異常の場合は、外来で治療できる方が大半で入院になることは少ないです。言い換えると、血液中の脂肪が多いけれど、その他の生活習慣病には罹患していない段階で生活習慣を考え直して変えて、または治療を開始したならば、重症化せずに日常生活を過ごせる可能性が高くなります。健康診断などで脂質異常を指摘された場合は、お早めにいらしていただくことが重要です。
脂質異常症の予防法
- 栄養バランスのとれた食事
- コレステロールを多く含む食品、脂っこい料理を控える
- 糖質(炭水化物)を摂りすぎない
- お酒はほどほどに(日本酒1合、ビール750CC程度)
- 1日30分以上の有酸素運動を週3回以上行う
- 適正体重に近づける
- 十分な睡眠
- ストレスを溜めず、リラックスする
- 禁煙しましょう
- など
脂質異常症の治療
- 治療に当たっては、食事療法と運動療法、薬物療法が3本柱となりますが、特に重要なのは食事療法です。肥満傾向の方は、やはり減量を開始しましょう。但し、急に体重を減らすことは危険です。一か月で体重の3%(80㎏の方ならば2㎏)を減らすようにします。
- 食事の内容は、動物性の脂肪を減らして魚や植物性の油を摂取する、特に不飽和脂肪酸(オメガ3,6,9)、3食少しずつでもきちんと摂る、腹八分目にする、就寝前2時間は食べない、よく噛んで食べる、早食いは控える、塩分を減らす、清涼飲料水や菓子類は過剰摂取しない、などが大切です。お酒に関しても、ストレス解消などの効果は指摘されていますが、量がある適正をこえると脂質異常症の危険を高めます。
- 適切な運動をすることも大切です。血管によい刺激をあたえます。有酸素運動を行うと、中性脂肪が低下し、善玉コレステロール値は上昇します。散歩、軽いジョギング、自転車運動、水泳などを1日に30分、これを毎日行うことが理想ですが、仕事などで難しい方も多いでしょう。まずはできる範囲で、私もなるべく7000歩、休みの日は1万歩を歩くようにしています。
- これらによっても改善しないときは、薬物療法を行います。また家族性と考えられて数値が高く、動脈硬化のリスクが高い場合は、症状が悪化しないよう診断時から薬物療法を行うこともあります。